イスラエルのスタートアップ最前線（１） SimilarWeb（シミラーウェブ）

ありがたいことに、Jakoreの取引先は魅力的なイスラエル企業ばかりである。

彼らの製品やアイディア、ビジネスモデルは、本質からイノベーティブと言えるもので、関わるうちにどんどん心惹かれていく。先週お話しした通り、業界の巨人や既存の仕組みに真っ向から立ち向かうイスラエル魂を感じさせてくれるのだ。

ビジネスパートナーとして、各企業の魅力をみなさんにも知っていただきたいので、今週から可能な限り各企業の紹介をさせていただく。

3000社以上が選んだWeb解析ツール「SimilarWeb Pro」

第一弾はSimilarWeb（シミラーウェブ）。

日本でもデジタルマーケティングに携わる方はご存知の会社ではないだろうか。

現在本社はロンドンにあるが、2009年にイスラエルのテルアビブで設立され、SimilarWebPro（日本公式ホームページ）というWebサイトの業界解析やモバイルアプリ解析をするツールを開発している。

簡単に言えば、例えば自社や競合企業のサイトのアクセスの概要やトラフィックを把握したり、業界単位で同様の情報を解析しマーケットについて知ることができるのだ。さらにウェブサイトのインサイトレポートの提供など、データを活用したサービスを展開しており、日本では株式会社ギャプライズが販売・サポートを担っている。

機能は豊富で、ダッシュボードもシンプルで非常にわかりやすい。

導入実績は3000社以上と海外だけでなく、日本でも普及している製品だ。

そして彼らは「データを意味ある情報に変換する。それが私たちの使命です。」と謳い、驚くべきことに無料で一般用のSimilarWebも公開している。

ブラウザの拡張機能に組み込めば簡単にサイト解析情報を見ることができるので、ご興味のある方は是非一度試してみていただきたい。

SimilarWeb社の魅力とは〜正しい自由競争原理を生み出す

さて、一般的な情報を紹介してきたが、これではSimilarWebが優れた製品であることしかお伝えできていない。

私自身が心惹かれるポイントは、もう少し違うところにあるのだ。

私がSimilarWebと出会ったのは、Viber（バイバー）にいたころである。イスラエルの若いメンバーの中では「働いてみたい会社」としてよく名前が挙げられており、実際に転職したメンバーにオフィス見学をさせてもらったこともある。その後、以前のブログでもちょっと触れたが、私の妹分でもあるHilaがJaffa（ヤッファ）でのプライベートパーティーでCEOに紹介してくれたのが取引のきっかけである。

以来、私からは日本市場や日本のビジネス、法務、労務などに関するアドバイスをさせていただいている。今では日本法人も立ち上がり、素晴らしい日本代表も着任されている。

私が彼らとビジネスをしたいと思った背景は、彼等の理念がとても好きだからだ。

SimilarWebProのツールの基本コンセプトは、競合のあらゆるデータを可視化することだ。ここでのポイントは、何かしらデータ解析をしてインサイトを提供するわけではなく、あくまで全員に平等にデータや情報をオープンにして提供するところにある。

ビッグデータはあればあるだけ分析の精度も上がっていくものである。そしてネットワーク上のつながりが多く深いところほどデータは集められる。そういう意味では大手IT企業のG社やA社はデータ競争においては完全に優位であり、業態や分野によっては競争が生まれないくらいドミナントになっている。

そんななかで、SimilarWebはこのデータ競争に一石を投じるものだ。ビッグデータをどこか大手数社がパワーで牛耳る世界ではなく、しっかりと投資すれば誰にでも競合のデータを展開できる仕組みを提供することで、自由な競争環境を作りあげているのだ。

私は自由競争原理が好きである。

シカゴ大学で学び、シカゴ学派にどっぷりつかった影響もあるが、自由競争こそが、良いプロダクトやサービスを生み、さらにはそこから”Outside the box”の発想を生み出すと考えている。つまり、イノベーティブな発想にはこうした競争環境が必要なのだ。

SimilarWebの理念はまさにその世界を生み出すものと言える。

データを収集し、一定のアルゴリズムでデータを膨らませ、それを全面開放する。ある種のタブーに切り込み、敢えて嫌われ者を買って出ていると言えなくもない。しかし、これぞまさにイスラエルのスタートアップ魂そのものだと思うのだ。

イスラエルスタートアップの発想には、ビッグデータの世界に存在する大きな力を崩していきたいと言う考えが強くあるが、その強い考えがあるからこそ、彼らはユニコーンと呼ばれる存在になっていくのだろうと思う。SimilarWebもその仲間入りにリーチをかけている（関連記事）。

私達はこういう会社を今後とも応援し続けたい。

※本日の写真はSimilarWeb社CEOと